アマニストのすすめ

油に対する意識の変化油に対する意識の変化

小山:管理栄養士としての講演や料理教室での調理・栄養指導をしていて、皆さんの油の摂り方、油に対する意識がずいぶん変わってきたように思います。
一方メディアでも様々な油がとり上げられてはいるのですが、その油に対する情報を、きちんと正しく理解している方が少ないようにも思います。
先生は最近の女性の方達の油に対する、理解や嗜好に付いてお気付きの点はありますか。

池谷:そうですね、私の内科医、特に血管を専門にしている立場から見ると、皆さんの油に対する関心は、「コレステロールを上げる、下げる要因になるもので、その結果動脈硬化などの病気を引き起こすのでは」という理由で高まったように思います。
悪玉コレステロール値を上げない油は動物性より植物性という理解から、植物性油ばかりを摂るようになって、その結果脳卒中、心筋梗塞が増えてしまった。そこから植物油だけに頼ってはいけないという反省の時期もありました。
その後、テレビ等の影響でオリーブオイルが話題になり、さらにEPAやDHAになるα-リノレン酸、アラキドン酸となるリノール酸といったさまざまな油からの栄養素が一般に知られるようになり、最近ではオメガ3(n-3系)脂肪酸が重要だというところまで来たようです。

油の種類油の種類

小山:一般の方々は油というと植物性、動物性の違いくらいしか意識してらっしゃいませんが、一口に油と言っても飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、そして不飽和脂肪酸には一価不飽和脂肪酸、多価脂肪酸に分かれ、さらに多価脂肪酸にはオメガ3(n-3系) 脂肪酸とオメガ6(n-6系) 脂肪酸といった様々な種類があって、同じ植物油でも結構違いがあるんですよね。

池谷:でも、そうした話になると途端に学校の化学の勉強みたいになってしまって、興味が失せてしまう。
そこでテレビや雑誌等では、クルミとかオリーブオイルとかココナッツとか、具体的な一つの食材にしぼり、それがどんな特性を持っているか、分かり易く伝えようとします。その結果、それだけ食べていればいいというような誤解も定着してしまっているようです。

小山:消費者の方々はテレビの情報番組等で取り上げられて、「良いみたい」ということだけで、「その油を摂ってみよう」ということになっています。

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池谷:そうなんです。
そうしたテレビの影響の結果だと思いますが、うちの外来に来られる患者さんが、オメガ3(n-3系)脂肪酸の油は体内でEPAやDHAに形を変えることで、健康長寿や若々しさに役立つということを、情報番組で見たそうです。
オメガ3(n-3系)脂肪酸がクルミに含まれるということで一時期クルミに凝って、次にエゴマ、さらにしそ油と摂っておられる方がいらっしゃいました。
実はオメガ3(n-3系脂肪酸)の油をたくさん持っている食材は、一般的に青魚といわれるイワシやサバですが、そうした魚はあまり召し上がらないんですよね。テレビで紹介された「良い」と言われる食材だけを買われているんです。 このような様子を見ると、オメガ3(n-3系)脂肪酸の油がなぜ良いのか、まだ皆さんに十分理解されていないのかなとも思います。
先ほど油の種類を説明すると学校の勉強みたいで、といいましたが、私の作った油の種類の資料を掲げておきますね。

摂るべき油、摂らないでいい油摂るべき油、摂らないでいい油

小山:「油を摂り過ぎると太るし、メタボになる。油は悪いものだと思っていた。でも、摂るべき油と摂らなくてもいい油があるということに驚きました。」ということを、若い生徒さんからも年配の生徒さんからも聞きます。
どうもこれまでは「油はあまり摂ってはいけないもの、悪いもの」という意識を持っていたようです。

池谷:それは「たくさん摂っちゃいけない」と言われていた時に、摂っていた油が、摂りすぎると悪い油だったんですよ。
例えば、動物性の油を摂りすぎることによって肥満になったり、悪玉コレステロールや中性脂肪値が高くなったりしたために、油を控えましょうと指導がなされたということです。
今でも普通の食生活の中で無意識に摂っている油も飽和脂肪酸だったりオメガ6(n-6系)脂肪酸だったり、これらは多く摂らない方がいい油ですよ。だから一言で言えば、「摂りすぎない方が良い」と言った方が健康指導になる訳です。
いらない油を控えて、いい油、具体的に言うとオメガ3(n-3系)脂肪酸のα-リノレン酸を積極的に摂りましょう、ということです。

小山:なるほど。 今日のように摂らなくてもいい油を摂りすぎるようになったのは、戦後の日本人の食生活の変化が大きな原因ですよね。

池谷:魚から肉に変わって来た結果、摂っている油も大きく変わりましたね。

小山:今、「たくさん摂りましょう」と言われるオメガ3(n-3系)脂肪酸。昔は魚をたくさん食べていたのできちんと摂れていましたし、飽和脂肪酸を含む肉を食べることも今よりはずっと少なかったので、油の種類やバランスも良かったのでしょうね。
それが食の欧米化によってバランスが大きく崩れ、圧倒的に飽和脂肪酸やオメガ6(n-6系)脂肪酸の摂取が多くなった。

池谷:その結果、メタボリックシンドロームの方が増え、その最終状態である脳卒中、心筋梗塞が増えてきています。また炎症反応であるアトピーや花粉症の方も増えています。

小山:そんな中で、日本の食生活にはあまりなじみのなかった油、オリーブオイルが出てきて、少しずつ健康な油に対する意識が芽生えたように思います。

池谷:そうですね、その頃は皆さんコレステロールの値にこだわっていた時で、「他の植物油は食習慣を乱す原因となってしまい、いつまでも健康ではいられないけど、オリーブオイルは食習慣を整えてくれるので、オリーブオイルが良い」と言うことになった。

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小山:でも、オリーブオイルはオメガ3(n-3系)脂肪酸を多く含むアマニ油とはグループが違いますよね?

池谷:治療現場でも食習慣を整えてくれるオリーブオイル的なものがありますが、それだけで治療するよりは、オメガ3(n-3系)脂肪酸のEPAやDHAを併用することで、より明らかに乱れた食習慣が整ったというデータが日本で得られています。
その結果、私たちの医療現場でも、健康を維持し食習慣を整えてくれるEPAやDHAといったオメガ3(n-3系) 脂肪酸の油が重要と認識されるようになりました。

小山:そうすると病院でもEPAやDHAを処方されているのですか。

池谷:はい、EPAの製剤もありますし、EPA+DHAというものもあります。
ですから、家庭でもオリーブオイルを摂ることによって、食習慣のコントロールを悪くしないようにしつつ、オメガ3(n-3系) 脂肪酸の油を摂っていくことが有用であると考えています。

小山:ということは健康な方もオメガ3(n-3系) 脂肪酸は摂った方が良いのですね?

池谷:そうですね。オメガ3(n-3系) 脂肪酸を摂ることによって様々な予防につながる可能性が高いと思います。

オメガ3(n-3系)脂肪酸 対 オメガ6(n-6系) 脂肪酸オメガ3(n-3系)脂肪酸 対 オメガ6(n-6系) 脂肪酸

小山:飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とかオメガ3(n-3系)脂肪酸、オメガ6(n-6系) 脂肪酸などの油の分類はちょっと複雑ですけど、簡単な理解として、毎日私たちの体の中で細胞ができて行く時に必ず必要だけど、体の中で合成できない必須脂肪酸がオメガ3(n-3系)脂肪酸やオメガ6(n-6系) 脂肪酸である。
というところで、もう一度オリーブオイルとオメガ3(n-3系)脂肪酸の違い、あるいは関係性について教えていただけますか。

池谷:一価不飽和脂肪酸のオレイン酸であるオリーブオイルは、一言で言うとオメガ9(n-9系)脂肪酸で、EPAやDHAのパートナーといえます。

小山:ということはパートナーにはなるけれど、代わりにはならない、ということですよね。オリーブオイルさえ摂っていればOKと言うことではない。

池谷:そう、そこで現状の食生活を考えて欲しいのですが。飽和脂肪酸、オメガ6(n-6系)脂肪酸、この2つは必要量を十分摂りすぎているくらいです。
では、ないものは何かを考えてみると、α-リノレン酸すなわちオメガ3(n-3系) 脂肪酸の油。EPAやDHAをできるだけ摂るようにしたい。 そして、オメガ6(n-6系)脂肪酸の摂り過ぎを防ぐ為に、揚げ物調理などをオリーブオイルで行う。要はオメガ6(n-6系)脂肪酸をオリーブオイルに置き換えるぐらいの方が良いということです。

小山:オメガ6(n-6系)脂肪酸は摂りすぎると炎症を起こしやすいと言われていますが、オメガ3(n-3系)脂肪酸は摂りすぎても大丈夫なんですか?

池谷:例えばエスキモーの人たちは、日本人の10倍くらいオメガ3(n-3系)脂肪酸の油を摂っていますが健康被害はありません。心筋梗塞の発症もかなり少ない、という事実から、オメガ3(n-3系)脂肪酸は多く摂っても害にならないと私は考えています。

小山:では、先ほどお話にあったオリーブオイルとオメガ3(n-3系)脂肪酸のパートナーシップのメリットは何でしょうか?

池谷:オメガ3(n-3系)脂肪酸の油は、熱を加える調理にはあまり向いていません。そこで、通常加熱調理に使うオメガ6(n-6系)脂肪酸の油を用いてしまうと、オメガ6 (n-6系)脂肪酸の摂取量が増大してしまう。だからそれをオリーブオイルに切り替える。
実は、オメガ3(n-3系)脂肪酸とオメガ6(n-6系)脂肪酸は、体の中、細胞膜の上で椅子取りゲームをしています。我々の体を守っている白血球。この白血球の膜に脂肪酸の入り込む椅子が在るのですが、この椅子を巡ってオメガ3(n-3系)脂肪酸とオメガ6(n-6系)脂肪酸が取り合いをするのです。そしてオメガ3(n-3系)脂肪酸が勝つと、身体をガードし健康を維持してくれます。逆にオメガ6(n-6系)脂肪酸が勝つと炎症を起こし易くなり、老化、動脈硬化を引き起こすことにつながります。

小山:ということは、今の食生活を考えてみると現代人の細胞はどうなのでしょうか?

池谷:現代人の細胞は、オメガ6(n-6系)脂肪酸の油でできあがった細胞を多く持っていると思います。そこで、オメガ6(n-6系)脂肪酸の油をコントロールするために、揚げ物は少なめのオリーブオイルを使うことをおすすめします。

小山:話は少し変わりますが、最近話題のココナッツオイルについてはどうですか。私の生徒さんも、高価なココナッツオイルを使って「健康になれそう」と満足しています。ココナッツオイルもオメガ3(n-3系)脂肪酸の油と同じような効用があると思っているようなのですが。

池谷:ココナッツオイルは飽和脂肪酸のひとつの中鎖脂肪酸であり、オメガ3(n-3系)脂肪酸の油とは全く違います。従って同じ植物性でもオメガ3(n-3系)脂肪酸を摂ったことになりません。
ココナッツオイルの研究は徐々に始まっていますが、認知機能の改善に役立つ、糖の代替物質であるケトン体を作り出す作用が注目されているようです。 ということで、糖が使えなくなった認知症の方に効果がある可能性があるという、限られたケースが伝えられています。

小山:植物性の油ならオールマイティに良いということではないのですね?

池谷:先ほどもお話ししたように、今の食生活で足りている、あるいは多く摂りすぎている、主に動物性の油である飽和脂肪酸や、植物性の油でもオメガ6(n-6系)脂肪酸の油は極力控えてください。
それ以上に、青魚やアマニに含まれるオメガ3(n-3系)脂肪酸の摂るべき油をいつでも摂れるように心がけ、実践していただくことで、身体を若々しく保ち、健康で楽しい毎日を過ごしていただきたいと思います。


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  ■プロフィール

池谷 敏郎
医療法人社団池谷医院院長兼理事長
医学博士 内科専門医 循環器専門医
東京医科大学客員講師

1962年 東京都生まれ
1988年 東京医科大学卒業。同大第2内科入局
1995年 池谷医院内科・循環器科勤務

小山 浩子 
管理栄養士 料理家
フードビジネスコーディネーター

料理教室の講師やコーディネート、
メニュー開発、栄養コラム執筆、NHKをはじめ健康番組出演等幅広く活動。
2015年1月 日本高血圧協会理事に就任。
【著作】
「目からウロコのおいしい減塩「乳和食」」(社会保険出版社) 2014年グルマン世界料理本大賞イノベイティブ部門世界第2位を受賞。

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