アマニ探訪

Columns of Amani

イギリス

バッツァー古代農場

過去の人々の暮らしを知ることは、私たちの暮らしの原点を知り、また時に迷ったときに手助けをしてくれるものです。
例えば食べものについて。滋養のあるものなのか毒か、どのように美味しく食べるかなど、
古代の人々が長い歴史の中で、自らの経験から教えてくれた大切な知恵です。
イギリスのハンプシャー地方に、B.C.300年頃の鉄器時代の住居つき農場を復元した施設、バッツァー古代農場があります。
当時どのような作物が育てられ、貯蔵され、利用されてきたかを観察記録することで、
その時代の人々の暮らしを知ろうという実験考古学の研究所です。
「古代人はどう暮らしていたか」という著書には、その復元の様子や、畑に植えられている作物について記されています。
その中にアマも植えられていました。

鉄器時代農場の復元

復元にあたって依拠した資料は、この時期の先史農耕民の農場から得られた証拠と、ケルト人について古典作者の記した文献記録とであった。農場は広さ23ヘクタール、起伏に富んだチョークの原野の尾根上にあり、畑、菜園、家畜、建物と工房、食料貯蔵穴(ピット)、それに鉄を作る熔鉱炉などが備えられている。これらは鉄器時代には不可欠のもので、本来、自給自足であったこの時代の農家の研究に直接関係してくるものばかりである。・・・

・・・バッツァーの畑は、掘りぐわと輓曵犂(からすき)(※1)で耕された。この畑は、リンチット(※2)で区画された境界を有している。これらの畑と他の小区画の土地には、二粒(エンマ)小麦、一粒(アルコイン)小麦、スペルト小麦、大麦、オート麦、マメ類、アマ、ホソバタイセイ(※3)などが、実験的に作付けされ、ことごとく収穫量と丈夫さが観察記録されている。

  • (「古代人はどう暮らしていたか」より)
  • ※1 牛や馬に引かせて田畑を耕すのに使う鋤のこと
  • ※2 lynchet、細長い形状の耕していない、ひな段状の畑のへりのこと
  • ※3 アブラナ科の植物で、葉茎を醗酵させて青色染料、また解熱・解毒薬に利用した
出典

「古代人はどう暮らしていたか」
ジョン・M・コールズ著 河合信和訳
どうぶつ社 1985年

「古代ギリシア・ローマの料理とレシピ」
アンドリュー・ドルビー/サリー・グレインジャー著 今川香代子訳
丸善株式会社 2003年

「最古の料理」
ジャン・ボテロ著 松島英子訳
法政大学出版局 2003年

「古代ローマの調理ノート」
アピキウス原典 千石玲子訳 塚田孝雄解説
小学館 1997年

「古代ローマの饗宴」
エウジェニア・サルツァ・プリーナ・リコッティ著 武谷なおみ訳
平凡社 1991年

「世界史大年表ートピックス&エピソード」
ジェームズ・トレーガー著 鈴木主税訳
平凡社 1985年

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1970年から計画されたバッツァー古代農場は、現在もこの地で季節ごとに様々なイベントやワークショップが行なわれています。ワークショップでは、植物のレメディ、鉄器の作り方、陶器作りなどの他に、古代ローマの料理の講座が設けられています。「鉄器時代と古代ローマ?」と思われるかもしれません。しかし、世界最古の料理の記録を調べたところ、1985年にイェール大学で「B.C.1600年ごろと年代づけられた古代メソポタミアの40種類ほどのレシピが載った楔型文字タブレット」が見つかる前までは、1世紀の古代ローマに生きた美食家アキピウスによる「デ・レ・コクィナリア」が世界最古の料理書とされていました。
アピキウスとほぼ同時代の古代人の遺体がデンマークで発見された際、大麦やアマニなどのスープか薄がゆを食べていたことが分かりましたが、古代ローマの人々の間でもアマニは食べられていたのでしょうか。バッツァー古代農場で古代ローマの料理を担当されているサリー・グレインジャーさんによる古代ローマの料理を紹介した著書、「古代ギリシア・ローマの料理とレシピ」には古代のレシピを再現したり、現代でも手に入る食材にアレンジした数々の料理が紹介されています。残念ながらレシピ中に「アマニ」の文字は見つかりませんでしたが、特定の原料を示していない「油」や「ナッツ」なども原文にはありました。往来のあった古代エジプトでも搾られていたアマニ油が、古代ローマで使われていても不思議ではありませんね。

「 古代人はどう暮らしていたか」表紙
(現在絶版・品切れ)
「 古代ギリシア・ローマの料理とレシピ」表紙
(現在版元品切れ)

関連レシピ

ナッツ入りパティナ

アピキウスによれば「パティナをひっくり返した菓子」ですが、
「古代ギリシア・ローマの料理とレシピ」の中でサリー・グレインジャーさんは、
ひっくり返すことから「ナッツ入りオムレツ」と名付けました。
アキピウスの原典から直接和訳された「古代ローマの調理ノート」では、同じ料理を「型抜きしたパティーナ」と呼んでいます。
アキピウスのレシピに調理法が示されていないことから、調理人により様々な想像ができそうですが、
ここではサリー・グレインジャーさんのレシピを参考にしてフライパンで焼いてみました。
パティナとは卵を添えたり加えたりした料理を指すそうです。また、古代ローマの調味料として特徴的なのがガルムという魚醤。
タイのナンプラーやベトナムのヌックマムといった所でしょうか。

材料 20cmのフライパン1枚(約4人)分

・松の実:大さじ1
・クルミ:2/3カップ
・卵:4コ
・アマニ油:大さじ1
・白ワイン:大さじ1
・牛乳:大さじ1
・ハチミツ:大さじ1
・ナンプラー(またはヌックマム):小さじ1
・コショウ:ひとつまみ

作り方と使用法

1. 松の実とクルミはから煎りし、包丁で刻んだ後すり鉢ですります。
2. ボールに卵を割りほぐし、1とすべての材料を加えて混ぜ合わせます。
3. 蓋のできるフライパンを用意します。熱したフライパンにオリーブオイルを引き(分量外)、2を流し入れて弱火にし、蓋をして焼きます。
4. 竹ぐしを刺してみて中まで火が通っていたら火からおろし、お皿にひくり返して盛りつけ4等分します。

  • ※ 道具の取扱いには充分注意してください。

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